大人の発達障害
「大人の発達障害」という言葉が最近よく聞かれるようになり、テレビなどで取り上げられることが増えました。自ら発達障害であることを公表する有名人も登場して、その存在は珍しくなくなりつつあります。
今回は、発達障害の特徴についてお話ししたいと思います。
発達障害の方の特徴
子どもの頃は成績優秀だったのに、仕事を始めるようになってからうまくいかなくなり、本人が困ってしまうケースがあります。例えば、「その場の雰囲気が読めない」「周囲とコミュニケーションをとるのが苦手」という理由で、です。社会に出るまでは、勉強に専念したり、苦手な人間関係は避けたりすればよかったので、さほど問題にならなかったのです。あるいは、子どもの頃から「うっかりミスを繰り返してしまう」「よく忘れ物をする」「どうしても遅刻してしまう」などという声も聞くことがあります。これらは誰にでも起こり得ることなのですが、程度によっては仕事や日常生活で支障が生じたり、社会生活にうまく適応できなかったりする、ということが起こります。
こんな場面で困っています
―仕事の進め方で困っているAさん―
“仕事の手順を考えるのが苦手なんです…。一度に複数のことが重なると余計に混乱してしまって。それに、集中しすぎるとあまり時間がわからなくなってしまいます。上司からは締め切りを守るように注意されるけど、そもそもスケジュール管理が不得意なんですよね…。”

―コミュニケーションがうまくいかないと感じているBさん―
“同僚達の話している会話についていけないことがあるんです…。たとえ話とか、あいまいな表現とかが出てくると、戸惑ってしまいます。思い切って聞き返すと、相手にびっくりされちゃったりして。あと、大きな声や感情的な話し方に敏感になってしまうから、そういう場面を避けようとすると孤立するように感じます…。”
特徴を知ることから
AさんのケースもBさんのケースも、誰でもが経験し得ることであり珍しいことではありませんが、発達障害の方の場合、その頻度や程度の差があり、社会生活にうまく適応できず苦労されているケースを多く見かけます。
ご本人が苦労していることを周りが気づかないと、お互いに「なんかうまくいかないな〜」という感触を持ってしまいます。本人の特徴、それによって起こり得る悩みを知ることが、スムーズな対応の一歩となります。先のケースではどのように対応したのでしょうか?
―仕事の進め方で困っているAさん―
Aさんは率直に上司に相談したところ、やるべき仕事の手順・優先順位づけを上司がサポートすることになりました。それによりAさんは仕事の進め方のコツをつかみ、スケジュール管理が以前よりもうまく進められるようになりました。
―コミュニケーションがうまくいかないと感じているBさん―
Bさんは、身近な先輩にまず相談してみました。先輩から周りの人達に説明してもらったことで、周りの人達も、Bさんと会話するときにはより具体的な表現・ていねいな説明をするように心がけました。また困ったときに相談できるように先輩にサポーター役についてもらうことで、Bさんは一人で抱え込むことがなくなりました。
逆転の発想
発達障害の方は、得意なこと不得意なことがはっきりしていることが多いといわれています。苦手なことも頑張って克服できれば良いのですが、向いていないことを長年続けていても、ストレスで不調になってしまう可能性があります。
逆に、その人に合った仕事をすれば、他人には真似できないような行動力や集中力を発揮できることも多くあります。周囲の方々はその特徴を理解しつつ、本人が適切なサポートを受けることにより、不得意なことをカバーし、得意なことをより活かすことができれば、職場はよりプラスの方向に動いていくことが期待できます。
どう適応していくかに主眼をおくこと
発達障害といっても、その特徴の現れ方も程度も人によって本当にさまざまです。また、その特徴は誰でも多少は持っているものであり、明確に「どこからが障害」とは言い切れない、というのが今の精神医学の考え方です。症状によって、もし不具合が生じているようなら、それに対してどうすればうまく適応していけるかという観点で、本人ができること、周りができること、をそれぞれ考えていくことが大切です。一人で抱えずに周りの人に相談しながら改善を目指していきましょう。
もし皆さんが周りの方のことで困っている、またはご自身が先述のケースに当てはまり、職場でうまくいっていない、などとお感じであれば、EAPでもご一緒に方向性を考えていくことができますので、いつでもご相談ください。
東京海上日動メディカルサービス株式会社
臨床心理士 石井
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