クライアントインタビュー

住友金属鉱山株式会社様

個別的な対応を改め、体系的・総合的にメンタルヘルスケアに取り組む

住友金属鉱山株式会社
別子事業所 総務センター長 金山 貴博様
2010年取材

──住友金属鉱山では2007年からメンタルヘルスケアに積極的に取り組まれていますが、どのような背景があったのでしょうか?
ストレスの多い現代社会の中、メンタル面で潜在的に不調を訴える人が近年著しく増加しており、当社でも徐々にメンタル面での不調者が増えてきています。その一方でメンタル面での不調に対する誤解もありました。厚生労働省でもココロの健康に関する各企業の積極的な取り組みを促していますし、当社でも個別に対応していたことを体系的・総合的に位置づけて全社的にメンタルヘルスケアに取り組むこととし、2007年3月、「過重労働による健康障害防止とメンタルヘルスケアに関するSMM指針」をまとめました。
*SMMとは住友金属鉱山の略
──具体的には、メンタルヘルスケア活動にどのように取り組まれているのでしょうか?
当社のメンタルヘルスケア活動は、「安全を最優先し、快適な職場環境の確保と労働災害ゼロを達成します」というCSR方針に基づいたものとなっています。厚生労働省指針に合わせ、4つの柱からなり、従業員に対してセルフケア、研修、カウンセリングを包括的にサポートしてくれるアドバンテッジEAPを活用しながら、当社独自の仕組みの充実を図っています。
第一の柱としてはセルフケアです。
アドバンテッジEAPのサービスである「ココロの健康診断eMe(イーミー)」を全従業員対象に実施しています。カラダの健康診断と同じように、ココロの健康診断として自分自身の調子を確かめ、カウンセリングを受けたり、医療機関に足を運んだりするきっかけにしてもらうことを目的としています。
また、一人一人が身につける知識の底上げのためにストレスの対処方法について学ぶ研修も全国の拠点で実施しています。
第二の柱としてはラインケアです。
職場は人生の中でも長い時間を過ごす場であり、従業員のココロの不調に上司が気付くことも多いことから、当社では管理監督者へのメンタルヘルス教育に最も重点を置いています。部下の体調変化を知るには通常の状況をよく把握しておくことにより、いつもと違う様子に気付くことができます。部下のココロの不調が疑われる場合、上司が本人と話し合い、会社として問題解決のサポートができるかどうかを探ることになりますが、接し方には注意が必要です。部下の悩みや心配事を傾聴することや業務の中で生じている問題の程度を把握することが大切ですが、管理監督者が適切な対応を取れないと、早期発見・早期治療の機会を逃すことになりかねません。当社では、基礎的な知識の習得を目指した基礎編に加えて、実際の相談場面を想定したロールプレイを通じて対処方法について体験的に学んでもらう実践編の研修を実施し、管理監督者のメンタルヘルスに関する知識・技能を高めています。
第三の柱としては社内スタッフによるケアです。
当社では事業所毎に産業医と提携しており、メンタル面での不調を感じたら相談できる体制を整えていますし、1ヶ月に80時間を超える長時間勤務があった場合は翌月に産業医の面接指導を受けるよう通知する仕組みになっています。さらに、社内に一定レベルの専門知識を持つスタッフを育てることで正しいケアを普及させることを目的に、毎年、課長クラス数名に産業カウンセラーの資格取得を目指して養成講座を受講させています。
第四の柱としては外部機関によるケアです。
全ての従業員は、アドバンテッジEAPの電話、メール、面談によるカウンセリングを利用することができます。自分自身のことだけでなく、家族や職場の仲間についても、専門医や臨床心理士に相談することができ、会社側には一切内容を知らされない仕組みなので、上司や産業医に相談しにくい場合のセーフティネットとして活用されています。また、「ココロの健康診断eMe(イーミー)」の回答結果によっては、担当医からフォローのメールやレターが個々の従業員に送られるため、本人の気付きを促し、カウンセリングにつながることが期待されます。
──社内のリソースとアドバンテッジEAPをうまく組み合わせて、効果的な活動をされているのですね?
はい。現段階ではまだ、欠勤者数、欠勤日数など大きく改善されたとはいえませんが、2008年4月のアドバンテッジEAP導入以来、従業員からの多くの相談に対応いただいているほか、全国各地での研修も状況に合わせてきめ細やかく行っていただいていますので、従業員の中でもメンタルの問題について理解が進み、本人も気楽に上司に相談できるようになり、またお互いに気遣う風土ができつつあるかと思います。これは数値に出ませんが、1つの大きな効果と言えます。
また、経験豊富な専門医や臨床心理士の方にいつでもどんなことでも相談できることは従業員にとって大きな安心感であり、社内組織ではなく社外の専門機関であることがプライバシー保護の観点から高い信頼感につながっています。
──包括的なメンタルヘルスケア活動を始められて3年になりますが、今後の課題はどのようなものですか?
2009年度1月より復職をスムーズにしてもらうよう「試し出社」制度を導入しました。これにより、メンタルを理由とした休職者が復職に向けソフトランディングできる制度面での充実を図り、会社側、従業員側、双方にとって安心して働くことのできる環境を整えています。
また、アドバンテッジEAPからは、「ココロの健康診断eMe(イーミー)」の回答結果からわかる組織の課題についても個人を特定できないデータとして報告いただいているので、その結果をヒントに、職場の雰囲気づくり・コミュニケーションの改善に役立てるような取り組みを今後強化していきたいと考えています。
メンタルヘルスケアの取り組みは従業員のココロの健康保持・増進につながり、結果として、生産活動での安全確保、品質の維持、ひいては会社と従業員がともに成長できればと考えております。
人材の育成は、今まで以上に企業にとって大切なテーマとなります。その一方で企業を取り巻く環境は大きく変り、毎日の仕事や会社生活の中で強い不安や悩み、ストレスを感じて働いている従業員が増えています。ココロの健康問題が従業員本人だけでなく、その家族、職場の上司・同僚に与える影響は大きくなっています。職場においてココロの健康保持・増進に積極的に取り組むことは企業の成長戦略にとって重要なものであるといえます。
(取材時は人事部労政担当部長)
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