日産自動車株式会社様
人事部主体での全方位的な取り組みで、メンタル不調者が減少
全従業員を対象としたストレスチェックやメンタルヘルス研修、組織分析結果をもとにした職場改善活動、相談カウンセリングの利用など、アドバンテッジEAPを活用した全方位的な対策を実施。
日産自動車株式会社
人事部 安全健康管理室 シニアスタッフ 栗林 正巳様
URL:http://www.nissan.co.jp/
日産自動車株式会社は、アドバンテッジEAPを活用して、ストレスチェックや組織分析を基にした職場改善活動等の諸施策に包括的に取り組み、メンタル休業者数や休業期間、再発率の減少などの具体的な成果を上げられています。そうしたメンタルヘルスケア活動の現状と今後について、人事部 安全健康管理室の栗林 正巳 様にお話をお伺いしました。

- 日産自動車では、かなり以前より、他社に先駆けてメンタルヘルスの取り組みを積極的に実施されていたと伺っていますが、現在の体制に至る経緯をお聞かせください。

栗林- 1960年代からメンタルヘルスについて様々な施策を講じてきていましたが、私が現在の部署に異動になり、体制の見直しを始めた2005年4月の段階では、本社や工場など事業所ごとに温度差が生じてしまい、施策のバラツキも見られました。このような体制では効果測定も困難であることから、メンタル不調者の増加に歯止めがかけられず、予備軍の実態把握も出来ないという意見もありました。
そのため、個別の施策をそれぞれに追加するのではなく、全社統一したコンセプトに基づいた包括的な対策を推進していく必要があると判断し、体制全般を見直していくことになりました。その実行部隊として、人事だけでなく、産業医療スタッフ、健保組合等も含めたメンバーによる「メンタルヘルス専門チーム」を作り、健康管理に関する全社的な戦略策定、活動計画立案、実行センターの機能を持たせました。

- そのパートナーとして、アドバンテッジEAPが採用されました。アドバンテッジEAPを選んだ理由をお聞かせください。

栗林
「メンタルヘルス専門チーム」の目的は、発足当初はメンタル不全による休職を減らすことにありました。そのための基本構想として、「予防カウンセリング機能」、「発症ケースカウンセリング機能」、「企画・プランニングコンサルタント機能」の3機能を中心に据え、この機能を提供できるEAPの導入を検討しました。
10数社のEAP企業より情報収集をした中で、アドバンテッジEAPは当社と有機的な連携ができると考えました。社員個人へのサポートを中心としているEAP企業が多い中で、組織全体としての戦略立案にどのように関わっていけるかが重要な要素であると考えていましたが、アドバンテッジEAPは、当社と考え方や目的を共有し、プライバシー保護も厳守した上で、休職者や復職者への対応や長期的なメンタルヘルスケア施策の立案に一緒に取組んでいけるパートナーであると考えました。また、専門の医師や臨床心理士のサポート体制が整っており、早期発見・早期対応に関する実績を持っていたという点も挙げられます。

- 現在のメンタルヘルスケア活動の目的・目標について、お聞かせください。

栗林- メンタル不全による休職者を減らすということを主眼に、中期的な数値目標を立てて対策を進めています。評価指標として、(1)メンタル疾病による30日以上の休業者の発生率、(2)平均休業日数、(3)1年以内の再発率の3つを設定し、活動の成果を測定しています。この活動を行うに当たり、当社では、6つの枠組みにより統合的に従業員のケアを行っています。

- 6つの枠組みとは、具体的にはどのようなものですか。

栗林- 全従業員を対象としたストレスチェック、相談カウンセリング窓口の設置、ストレスチェックの組織分析結果を活用した職場改善活動、全従業員を対象としたメンタルヘルス研修、復職プログラムによる休職・復職のサポート、アドバンテッジEAPのコンサルタントによる従業員および人事部署へのサポートの6つです。

- 全従業員を対象としたストレスチェックとは、「ココロの健康診断eMe」ですね。

栗林- はい。「ココロの健康診断eMe」(以下、eMe)のテストに答えることで、各従業員は自らのストレス状態や個人固有の性格傾向を把握できます。セルフケアにつながる気づきとして有効であるほか、後の相談カウンセリング、組織分析のベースにもなります。

- 相談カウンセリング窓口については、どのような特徴がありますか。

栗林- アドバンテッジEAPの相談カウンセリング窓口では、自発的な相談のほか、eMeの結果、ストレス状態が高い社員に対しては、アドバンテッジEAPの医師からメール等でカウンセリングを促すという積極的なフォローの仕組みを整えています。また、カウンセリングを行う医師や臨床心理士はeMeの個人結果(性格傾向とストレス状態)を把握しているため、質の高いカウンセリングが期待できます。

- ストレスチェックの組織分析結果を活用した職場改善活動とは、どのようなものでしょうか。

栗林
eMeの結果を、部署別、職種別、職位別、年齢別などあらゆる切り口で分析することにより、現状の組織的課題の把握と解決のヒントが得られます。課題を示す指標と部署における休業者発生率とは相関があることも確認できていますので、この結果をもとに行う職場改善活動は、従業員の心身の健康維持やモチベーション向上、日産自動車の組織・風土の改善に貢献しています。

- メンタルヘルス研修については、どのようなところに留意されていますか。

栗林- 全従業員を対象としてメンタルヘルス研修を行っています。
2009年度からは管理職向け研修は、メンタル不調の部下を持っているかどうかで、「対応編」と「予防編」に分けて実施しています。イントラネット上に掲載した管理職向けの対応マニュアルと併せてメンタル不調の部下への対応の充実を図ると共に、メンタル不調者を発生させない未然防止の体質の強化も期待できます。3年間継続した結果、管理職の意識レベルが向上し、早期発見・早期対応に効果を上げています。
一般従業員向けには、セルフケア研修や、イントラネット上に月2回掲載するセルフケア関連記事により、自分自身のストレスへの対処を学んでもらっています。

- 復職プログラムはどのようなものでしょうか。

栗林- 日産自動車では「十分回復してからの復職」が重要と考え、試し出勤制度は採用していません。復職にあたっては復職後6ヶ月間の業務計画などを示した計画書を作成し、これに沿って復職プログラムが進みます。産業医や上司が出勤率や健康状態を踏まえながら面談をはじめとした手厚いケアを実施し、復職者の状況をきめ細かくフォローします。この結果、メンタル不調の再発件数が減少し、再発率が低下していると考えています。

- アドバンテッジEAPのコンサルタントによる従業員および人事部署へのサポートについて教えてください。

栗林- メンタル疾病への対応はすべてを標準化することが難しく、職場の上司はもとより、人事担当部署でさえ対応に苦慮することが少なくありません。日産自動車では、職場で問題を抱え込ませないために、職場は従業員の変化に気づくことを最大の使命とし、職場で解決できないと判断した場合は人事、安全健康管理室、診療所、EAPと連携するように指導しています。アドバンテッジEAPのコンサルタントは、ときには従業員と会社の橋渡し役も担いながら、メンタルヘルスケアの領域にとどまらず、組織や人事の問題解決をバックアップしてくれています。


- それぞれの施策が効果的に結びついて、統合的なメンタルヘルスケア活動となっているのですね。
3つ目の枠組みとして伺った「職場改善活動」については、現場発の自主的な活動である「カイゼン」の発想を生かしたユニークな取り組みと評価も高いようですが、その内容についてもう少し詳しく教えていただけますか。

栗林- 全社員を対象にしたストレスチェックeMeの結果をもとに、部署ごとの状況を「仕事・職場の負担」「仕事のしやすさ」「上司とのコミュニケーション」などの指標で評価します。
この評価の結果、課題のありそうな部署には、アドバンテッジリスクマネジメントのコンサルタントとともに安全健康管理室のスタッフが訪問して管理職との面談や一般従業員との職場懇談会を行い、現状を聞き取ります。
管理職は、これらの情報やコンサルタントの助言をもとに、一般社員を含めた現場で話し合って改善策を作成します。職場で顕在化した問題は、全社に共通するものも多いため、役員にもフィードバックしています。

- これらのメンタルヘルスケア活動の結果、具体的にはどのような成果がありましたか。

栗林- EAP導入当初は早期発見・早期治療を目指し、軽度な不調者の掘り起こしを行ったこともあり、メンタル不調による休業者の数は一定期間増加傾向にありましたが、4年目の2008年から、減少に転じました。やはり1~2年で結果を出すのは容易ではなく、施策を継続させることが重要だと感じています。
また、メンタル不調による平均休業日数とメンタル不調の1年以内の再発率については、2005年、あるいは2006年から減少に転じています。早期発見・早期対応や復職プログラムの効果の効果が現れたものと理解しています。 

- このような成果を上げることができた理由についてどのように考えていますか。

栗林- 産業医など産業保健スタッフの方々だけにまかせてしまうのではなく、人事がイニシアティブを持って、人事施策の一環として取り組んできたことが大きいと思います。人事主導で取り組むことで、社員にも会社が真剣に取り組んでいるメッセージが伝わります。 また、ストレスチェックや相談カウンセリングなどの施策を単体でバラバラに実施するのではなく、全方位的な施策を同時に展開してきたことも大きなポイントです。部分的な対策を行っても成果は限定的ですので、成果を出すためには、様々な施策を連携させた包括的な対策が不可欠であると思います。

- 職場のメンタルヘルスケア活動のなかで、現在どのような課題を認識されていますか。

栗林- 課題の一例として、中間管理職がプレーヤー化しマネジメント力が低下している、若年層のストレス耐性が低下している、急激な環境変化に対するとまどいや先の見えない不安が職場に芽生えている、などの問題点も職場懇談会から見えてきました。今まで以上に職場内で現場に密着したケアが求められていると感じます。

- 今後はどのような取り組みを行う予定ですか。

栗林- これからは起きてしまったことに対処することよりも、起きないようにする予防に向けた活動も重要であると思います。更にもう一歩進めて、組織のパフォーマンス向上を図る活動にも踏み込んでいきたいです。元気なときにより元気になるために相談カウンセリングのポジティブな利用をしてもらうことや、働きやすい環境を整備するために職場改善活動を全ての部署で自律的に実施してもらうようにするなどの取り組みを考えています。また、若者を中心とした個人のストレス耐性強化は避けては通れませんので、こちらについても更なる方策を検討しているところです。
メンタルヘルスケア活動は、施策を講じればすぐに効果が現れるものではなく、地道に継続していくことが必要だと思います。メンタルヘルス活動が不要になる時代を夢見ながら、これからも中・長期的な視野を持って対策に取り組んでいきたいと考えています。










